邦楽

あいみょんの生きていたんだよなの歌詞やタイトルの意味考察

2016年にリリースされたあいみょんの「生きていたんだよな」。

実在の事件を題材にした衝撃のメジャーデビューシングルです。

今回はあいみょんの「生きていたんだよな」の歌詞やタイトルの意味を考察してみました。

 

あいみょんの「生きていたんだよな」とは

  • 発売日:2016年11月30日
  • 作詞・作曲:あいみょん 編曲:立崎優介・田中ユウスケ

 

「生きていたんだよな」はあいみょんのメジャーデビューシングルです。

前年にリリースされたインディーズのデビューシングル「貴方解剖純愛歌~死ね~」も衝撃的な楽曲でしたが、この曲もまた違った意味で衝撃的でした。

2日前に見たという飛び降り自殺のニュースが頭から離れなかったので、自然とこの曲の歌詞を書いたとのことです。

そんな曲がメジャーデビューシングルとはなんとも攻めた感じです。

 

曲のストックはたくさんあるらしいですが、メジャーデビューが決まった後に書かれたこの曲がタイムリーということもあって1stシングルに選ばれました。

インディーズデビューシングルといい、結構狙った選曲だと思います。

実際、そのインパクトは功を奏した感じですが、その反面あいみょんに尖ったイメージを持たれてしまうことにもなったかもしれません。

 

歌詞はもちろん、あいみょんが初めて挑戦したというAメロでの語りも印象的です。

語りだと歌う以上に言葉が強くなったりするんですが、単純に曲としてすごくかっこよく仕上がっています。

これはスタッフからのアドバイスによるもので、特に語りから歌に変わるところはこだわったそうです。

 

語りで「綺麗で」と言った後に同じ言葉で歌に入っていく感じがなんとも絶妙でかっこいいです。

初めて聴いたときはこの部分が特に印象に残りました。

 

また、花束とパンツという前衛的すぎるジャケットも印象的です。

ジャケット写真を担当しているのはとんだ林蘭さんという方で、彼女のインスタにアップされた写真を見てこんな感じがいいと思ったそうです。

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tell me the cause of the death

とんだ林 蘭さん(@tondabayashiran)がシェアした投稿 –

 

パンツがあるかないかでだいぶイメージが変わってきますが、意味深にはしたくなかったのでこんなアートワークになったとのこと。

シングルには「今日の芸術」、「君がいない夜を越えられやしない」という曲も収録されていますが、そちらの曲の歌詞もかかっています。

 

ちなみに「生きていたんだよな」はテレビ東京の深夜ドラマ「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」のオープニングテーマで初のドラマタイアップ曲となりました。

正直、ドラマの内容とは全然イメージが違うのでちょっと不思議な選曲ですね。

メジャーデビューシングルがオープニングとして使われるということだけ決まっていて、結果この曲になったのかもしれません。

 

「生きていたんだよな」のセールスや評価

シングルはオリコンでは最高67位を記録しました。

決してヒットとはいえないセールスですが、あいみょんのメジャーデビューは音楽業界や一部の音楽ファンには衝撃を残したんじゃないでしょうか。

MVはYouTube上にリリースと同じく2016年11月30日にアップされました。

2019年3月現在で再生回数は1500万回を超えていて、YouTubeにアップされているあいみょんの楽曲の中では5番目に多い再生回数となっています。

「生きていたんだよな」全体のテーマ

先ほども書いたようにたまたまテレビで見た飛び降り自殺のニュースが元になっています。

自殺した女性の気持ちになるわけでもなく、野次馬の立場になるわけでもなく、ニュースを見て自分が思ったことを書いたとのこと。

自分でそういう道を選んでしまったけど「精一杯生きていたんだな」とあいみょんは思ったそうです。

歌詞はその状況について、そしてあいみょんが感じたことが綴られています。

 

素直に受け止めるととても重いテーマのように思えますが、あいみょん自身はそこまで重く受け止めてはいないんでしょう。

思うにあいみょんは歌詞にメッセージを込めるというよりは、頭の中にあることやイメージしたものを素直に作品にして後はリスナーがどう受け取るか、という感じで歌詞を書いているように思います。

実際この曲も「どんな反応があるか楽しみ」と語っていました。

 

ネットでリスナーの反応を見るとやっぱり重く受け止めている人が多いように感じました。

まあ、こういう歌詞だったらそう受け止めるしかないですよね。

私自身も「こういう事件があって、私はこう思ったけどみんなはどう感じる?」とあいみょんが投げかけているかのように感じました。

「生きていたんだよな」の歌詞の意味を考察

1コーラス目 Aメロ

二日前このへんで

飛び降り自殺した人のニュースが流れてきた

血まみれセーラー 濡れ衣センコー

たちまちここらはネットの餌食

「危ないですから離れてください」

そのセリフが集合の合図なのにな

馬鹿騒ぎした奴らがアホみたいに撮りまくった

冷たいアスファルトに流れるあの血の何とも言えない

赤さが綺麗で 綺麗で

ニュースの内容について綴られています。

実際の事件の内容にについては詳しく知りませんが、ほぼほぼ同じような内容になっているように見えます。

“血まみれセーラー”は女子学生、”濡れ衣センコー”は自殺の原因が学校の先生にあるとされたということでしょう。

「危ないですから離れてください」とは現場にいる警察官のセリフです。

事件現場では何があったのかと野次馬が集まり、現場を撮影した写真がSNS上で拡散され、ネット上でその事件が話題になっていきます。

実際にツイッターで現場の写真がアップされたそうですが、その中には生々しい血が写ったものもあったとか。

もしかしたら何が起こったのかわからず写真をアップした人もいるのかもしれませんが、わかった上でのことだとしたらさすがに不謹慎に感じてしまいます。

“アホみたいに”という言葉にそういう人たちを良く思わない心境が現れています。

そして、その赤い血を”綺麗”と表現しているのがなんとも印象的です。

この言葉はBメロへと続いていきます。

 

1コーラス目 Bメロ

泣いてしまったんだ

泣いてしまったんだ

何にも知らないブラウン管の外側で

Aメロから続く言葉で”血の赤さが綺麗で泣いてしまった”と綴られています。

この”綺麗”という言葉には生命や生きていることの素晴らしさのような意味が込められているように思います。

そんな出来事が起こったからこそ余計に”命”が素晴らしいものに感じられますし、それが失われてしまった悲しさもあります。

だから”泣いてしまった”んでしょう。

命がなくなってしまったこともそうですし、それに群がる野次馬の存在も悲しいものかもしれません。

そのニュースをテレビで見てやり切れない気持ちになっているあいみょんが想像されます。

 

1コーラス目 サビ

生きて生きて生きて生きて生きて

生きて生きて生きていたんだよな

最後のサヨナラは他の誰でもなく

自分に叫んだんだろう

“生きて生きて”という言葉を力強く歌っているサビです。

“死んでしまった”ではなく、”生きていた”という言葉になっているのが印象的です。

心のどこかで「生きていてほしかった」という気持ちがあったようにも感じられますし、それがまた切なくもあります。

“最後のサヨナラは自分に叫んだ”というのもなんとも胸を打つ言葉です。

サヨナラというと他人に対して使う場合が多いですが、それを自分に向かって叫ぶとはなんとも悲しすぎます。

「自分にサヨナラを告げる」とは色々な想像をさせるフレーズですし、とても詞的でもあります。

この言葉のセンスにあいみょんの非凡な才能が感じられます。

 

2コーラス目 Aメロ

彼女が最後に流した涙

生きた証の赤い血は

何も知らない大人たちに二秒で拭き取られてしまう

立ち入り禁止の黄色いテープ

「ドラマでしかみたことなーい」

そんな言葉が飛び交う中で

いま彼女はいったい何を思っているんだろう

遠くで 遠くで

“現場に残った彼女の涙と血”は彼女が最後にこの世に残したもので、彼女が最後に何を思っていたのか、彼女のそれまでの人生も象徴するようなものです。

でも彼女のことやそこに至った事情も何も知らない警察によってあっさり拭き取られてしまいます。

そして、現場には何も知らない野次馬が騒いでいます。

もちろん警察はそれが仕事ですし、全く知らない赤の他人に対しては仕方のないことなんですが、その状況を思うとどこか切なくなってしまう感もあります。

彼女がどんな人で、どんなことを考えていたのか誰も知らないのです。

この世からいなくなってしまった彼女はそんな状況をどう思っているんだろうか、あいみょんはそう考えたんでしょう。

何も思わないかもしれませんし、寂しく感じるかもしれません。

そんなことを考えていると、赤の他人だった彼女の存在を意識するようになっていきます。

 

2コーラス目 Bメロ

泣きたくなったんだ

泣きたくなったんだ

長いはずの一日がもう暮れる

彼女のことを思ってか泣きたくなってしまいます。

それまで全く知らない存在で考えることもなかった彼女のことをこのニュースで初めて知り、考えるようになったわけです。

それもどこか切ない気がしますし、考えれば考えるほど悲しくなって泣きたくなってしまいます。

“長いはずの1日”もそんなことを考えるうちに終わってしまいます。

ニュースを聞いてから1日中考えを巡らせていたのでしょう。

 

2コーラス目 サビ

生きて生きて生きて生きて生きて

生きて生きて生きていたんだよな

新しい何かが始まる時

消えたくなっちゃうのかな

サビで再び”生きて生きて”と繰り返されます。

実際の話でいうと新年が始まったばかりの頃に事件が起こりました。

例えば中学から高校に上がるとき、高校を卒業して大学に入るとき、大学を卒業して入社するとき。

新しい環境に向かうとき、人は改めてそれまでの自分を振り返ったり、これからの自分のことを考えます。

これまでを嘆いたり、これからを不安に思ったりすることもあるでしょう。

そうすると逃げたくなってしまうこともありますよね。

 

Cメロ

「今ある命を精一杯生きなさい」なんて綺麗事だな

精一杯勇気を振り絞って彼女は空を飛んだ

鳥になって 雲をつかんで

風になって 遥遠くへ

希望を抱いて飛んだ

曲中で印象的なパートの一つです。

“精一杯生きなさい”なんてよく聞く言葉です。

言うのは簡単ですが、行うのは簡単ではありません。

もちろん言っていることもわかるんですが、無責任のようにも思えますし、ある意味ではただの綺麗事です。

こんなことがあるとそうも思えてきてしまいます。

そして、この世界から消えてしまった彼女のことを”鳥になって 風になって 希望を抱いて飛んだ”とポジティブにイメージしています。

自ら望んでの行動ですし、ポジティブに捉えるとそのような言葉に置き換えることもできます。

これも彼女の気持ちを深く考えたからこそ出てきた言葉かもしれません。

もちろんこれが結論でも全てでもなく考えの一つだと思いますが、あいみょんは彼女に対してこんなイメージを持ったんでしょう。

 

3コーラス目 サビ

生きて生きて生きて生きて生きて

生きて生きて生きていたんだよな

新しい何かが始まる時

消えたくなっちゃうのかな

生きて生きて生きて生きて生きて

生きて生きて生きていたんだよな

最後のサヨナラは他の誰でもなく

自分に叫んだんだろう

サヨナラ サヨナラ

最後のサビでは1コーラス目、2コーラス目のサビが再び繰り返されます。

ギターと歌だけになる最後の”サヨナラ サヨナラ”が印象的で、後を残して曲は終わります。

自分に対しての彼女の言葉という意味の他に、あいみょんから彼女に向けての言葉でもあるのかもしれません。

こういう出来事に対してはひたすらネガティブなイメージや感情を持ったりするものですが、ポジティブな言葉も多いのがとても印象的です。

「もしかしたら彼女にとっては前向きな行動だったのかもしれない」と、彼女の気持ちに寄り添ったあいみょんの言葉。

否定するわけでも肯定するわけでもありませんが、あいみょんの一つの考えが真摯に綴られている楽曲です。

まとめ

受け取り方によってはとても重くなりそうなテーマですが、それを言葉に綴りながらポップミュージックとしてもしっかり成立しています。

重いんだけどそれほど重くなく、ハードなんだけどポップと絶妙なバランスで成り立っているように思います。

当時あいみょんは21歳だったわけですが、本当にその才能に驚かされますし、これがメジャーデビューシングルというのもやはり衝撃です。

たくさんあるあいみょんの楽曲の中でも特に完成度の高い楽曲だと思います。