邦楽

米津玄師の打上花火の歌詞やタイトルの意味考察

2017年にリリースされた米津玄師の「打上花火」。

アニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の主題歌となった切なくエモーショナルなバラードです。

今回は米津玄師の「打上花火」の歌詞やタイトルの意味を考察してみました。

 

米津玄師の打上花火とは

  • 発売日:2017年8月16日
  • 作詞・作曲:米津玄師 編曲:米津玄師・田中隼人

 

「打上花火」はDAOKOとのコラボ曲で、アニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の主題歌として制作されました。

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「打ち上げ花火~」の原作は岩井俊二監督で、1993年にフジテレビで放送されたテレビ映画です。

後にヒット作を多く生み出した岩井俊二監督の評価と知名度を一気に上げた作品で、今でもファンの多い伝説的な名作ドラマです。

そのドラマが2017年になってアニメ映画化され、主題歌を米津さんが担当するということで大きな注目を集めました。

 

映画のプロデュースを務めるのはあの「君の名は。」の川村元気さん。

声優陣も広瀬すずさん、菅田将暉さん、松たかこさんと超豪華なメンツが揃っています。

が、原作の評価が高すぎるのと「君の名は。」の二番煎じ的な見方をされたのもあって賛否両論がありました。

とは言え、そういう先入観抜きにして見るととても素敵な映画だと思います。

 

楽曲の名義は”DAOKO×米津玄師”となっていますが、元々米津さんは歌う予定ではなかったそうです。

恐らく最初は楽曲提供的な感じだったんだと思いますが、川村元気さんの意向でデュエット形式となりました。

シングルとしてはDAOKO×米津玄師名義ですが、4thアルバム「BOOTLEG」にアレンジが全く違う米津さんのセルフカバーバージョンが収録されています。

正直言って原曲の方が全然良いんですが、興味がある方は聴いてみてください。

DAOKOとしては2ndアルバム「THANK YOU BLUE」にシングルと同じデュエットバージョンが収録されています。

 

打上花火のセールスや評価

映画の興行収入は15.9億円と大きなヒットとなりましたが、楽曲も大ヒットしました。

オリコンでは最高9位でしたが、Billboard Japan Hot 100では最高1位、2017年間で3位、2018年間でも4位とロングヒットを記録しました。

MVはYouTubeで映画の公開にさきがけて2017年8月9日にアップされ、それから5カ月後には1億回再生、2019年3月現在は2億5千万回再生を突破しています。

YouTubeの「国内年間トップトレンド音楽動画 2017」でも1位を獲得しました。

米津さんが影響を受けたアーティストのRADWIMPSが主題歌を担当していることもあって、やっぱり「君の名は。」と比較してしまうんですが、「君の名は。」の興行収入はなんと250億円で「前前前世」の再生回数はおよそ2億回。

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「打上花火」は映画の興行収入的にはかなり少ないものの再生回数で「前前前世」を超えているのは、それだけ楽曲単体で評価されているということだと思います。

一般の音楽ファンからはもちろん、批評家からも高く評価されている楽曲です。

打上花火 全体のテーマ

米津さんは元々岩井俊二監督の作品が好きだったようですが、原作・アニメ共に夏が舞台になっていて、”幻想的で淡く切なく儚い”世界観は共通しているように思います。

夏の切なさみたいなものを凝縮できるような曲にしたい」と語っていましたが、その雰囲気がうまく表現された楽曲です。

原作や映画が単なる”恋愛映画”かというとちょっと違うんですが、恋愛の要素もしっかりあって、その周りを”幻想的で淡く切なく儚い”世界観が取り囲んでいるようなイメージでしょうか。

楽曲の響きはもちろん、歌詞にもそんな世界観がしっかり反映されています。

「夏休みの間に起こったどこか幻想的で儚く切ない恋」が文字でも表現されているのは本当に見事です。

歌詞だけ見ても十分ですが、原作や映画を見たうえで改めて歌詞を読んでみるとより一層味わい深いかと思います。

米津さんの歌詞は独特な世界観で難しい表現も多いですが、この楽曲は映画館でたくさんの人に見られるということで”普遍的”なものとして作られていて、歌詞も比較的ストレートでわかりやすくなっています。

打上花火の歌詞の意味を考察

MVは歌詞と映像がリンクしたような映像になっているので、その辺にも注目です。

 

1コーラス目 Aメロ

あの日見渡した渚 今も思い出すんだ

砂の上に刻んだ言葉 君の後ろ姿

寄り返す波が足元をよぎり 何かをさらう

夕凪の中 日暮れだけが通り過ぎてゆく

過去を思い返すようなイメージで曲が始まります。

夕暮れ時に2人の男女が海辺にいる様子が美しく綴られています。

“君の後ろ姿”、”日暮れだけが通り過ぎてゆく”という言葉から2人の仲はまだそれほど親密ではなく、少し距離感があるようなイメージも感じます。

隣にいるのであればそれほど後ろ姿のイメージは残らないでしょうし、2人で一緒に何かをしているのであれば”日暮れだけが通り過ぎる”という言葉も出てこないでしょう。

明確に意識しているのかはわかりませんが、映画に登場する”なずな”と”典道”の関係性も見事に表現されています。

どちらかというと典道の視点のようですが、DAOKOさんが歌っているということでなずなの心境を表現しているとも言えるかもしれません。

 

1コーラス目 サビ

パッと光って咲いた 花火を見てた

きっとまだ終わらない夏が

曖昧な心を 解かして繋いだ

この夜が続いて欲しかった

サビには映画の中でも最も印象的な花火のシーンをイメージさせる歌詞が綴られています。

花火を見ながら抱いた2人の恋心。

それまでの「好きかもしれない」という曖昧な気持ちが花火の打ち上げに合わせるかのように確かなものとなります。

ちなみに映画では花火が打ち上げると海の中にいる2人が抱き合います。

2人はその後離れ離れとなってしまいますが、”この夜が続いて欲しかった”という言葉がとても切なく響いてきます。

花火が打ちあがる様子を表現した”パッと光って咲いた”という言葉もなんとも絶妙です。

 

2コーラス目 Aメロ

あと何度君と同じ花火を見られるかなって

笑う顔に何ができるだろうか

傷つくこと 喜ぶこと 繰り返す波と常道(じょうどう)

焦燥 最終列車の音

ここから米津さんのソロパートになります。

“あと何度君と同じ花火を見られるかな”という言葉が離れ離れになってしまう2人をイメージさせます。

また、”笑う顔に何ができるだろうか”という言葉にもその儚さや切なさが込められています。

“常道(じょうどう)”はあまり聞き慣れない言葉ですが、「常に行わなければならない道」という意味です。

歌詞のストーリー的には直接関係なさそうですが、映画には「起こってしまった出来事をやり直すことができる」という設定があって、”繰り返す”を含めそんな世界観を反映しているように思います。

映画で登場する電車のシーンも印象的ですが、”最終列車の音”も映画のイメージを感じさせます。

作品をイメージさせながら歌詞としても意味を持たせるというのは米津さんの真骨頂とも言えますね。

 

2コーラス目 Bメロ

何度でも言葉にして 君を呼ぶよ

波を選び もう一度

もう二度と悲しまずに済むように

「起こってしまった出来事をやり直すことができる」というのも映画の中での印象的な設定ですが、このパートもそれを表現しています。

“波”も映画をイメージさせる言葉ですね。

“君を呼ぶために何度でも 悲しまずに済むようにもう一度波を選ぶ”

現実ではありえない事ですが、恋愛の中で失敗してしまったとしたら誰もが「もう一度あそこからやり直したい」と思うんじゃないでしょうか。

心情としては十分あり得ることなので、映画の設定を抜きにしても成立する言葉ですね。

 

2コーラス目 サビ

ハッと息を呑めば 消えちゃいそうな光が

きっとまだ胸に住んでいた

手を伸ばせば触れた あったかい未来は

密かにふたりを見ていた

1コーラス目のサビと同じく花火をイメージさせる歌詞ですが、こちらは花火が打ち上がった後を想像させます。

1コーラス目が打ちあがった瞬間、2コーラス目は花火が消えていく瞬間です。

花火の光は消えていくけど、胸にある思いはまだ消えそうもありません。

結局2人は離れてしまうんですが、”あったかい未来が密かにふたりを見ていた”という言葉に「できればこうあってほしい」という切実な希望と切ない現実を感じます。

 

Cメロ

パッと花火が

夜に咲いた

夜に咲いて

静かに消えた

離さないで

もう少しだけ

もう少しだけ このままで

DAOKOと米津さんの掛け合いのパートです。

2人の恋愛は花火が咲いて消えるように短い間のものになってしまいましたが、逃れられない現実があるからそうなっただけです。

本心は”消えないで欲しい、離さないで欲しい”、離れてしまうのなら”もう少しこのままでいさせて欲しい”と思っています。

同じ単語が繰り返させることで、その心情がよりエモーショナルに聴こえてきます。

 

3コーラス目 Aメロ・サビ

あの日見渡した渚 今も思い出すんだ

砂の上に刻んだ言葉 君の後ろ姿

パッと光って咲いた 花火を見てた

きっとまだ終わらない夏が

曖昧な心を 解かして繋いだ

この夜が続いて欲しかった

1コーラス目のAメロの前半部分とサビの歌詞が繰り返されます。

曲の展開と共に夏の間に起こった出来事や心情が展開されていきましたが、ここで再び現実に戻ります。

二人で花火を見て恋心を燃やしたのはやはり過去のことでもう君はいません。

この曲を一言で表すとしたら”この夜が続いて欲しかった”という言葉になりますが、その言葉で曲を締めます。

まとめ

単体で聴いても世界観を反映した映画の主題歌としても本当に素晴らしい楽曲だと思います。

個人的には映画以上に切なく感じたんですが、どちらかというと岩井俊二作品のイメージに近いような気がしました。

明確な感情や状況を表現する言葉を使わずに、それとなくイメージを表現している様は本当に見事で感動してしまいます。

映画を見るとこの曲が聴きたくなってしまうし、この曲を聴くと映画を見たくなってしまう、そんな素敵な楽曲です。

また、米津玄師さんのおすすめ曲を「米津玄師のおすすめ曲ランキングベスト10」にまとめているので、米津ファンの方はそちらもご覧ください。