邦楽

米津玄師の春雷の歌詞やタイトルの意味考察

2017年にリリースされた米津玄師の「春雷」。

清涼感を感じるエレクトロポップサウンドと、切なくも爽やかな恋心を綴った歌詞がとても印象的な楽曲です。

今回は米津玄師の「春雷」の歌詞やタイトルの意味を考察してみました。

 

米津玄師の春雷とは

  • 発売日:2017年11月1日
  • 作詞・作曲:米津玄師

 

「春雷」はメジャー3rdアルバム「BOOTLEG」の8曲目に収録されています。

まず、印象的なのがそのサウンドです。

それまでの米津さんの楽曲というと主にバンドサウンドが基調になっていましたが、この曲はエレクトロポップ感が満載です。

そもそも「BOOTLEG」自体がこれまでにないくらいサウンドやアレンジがバラエティに富んでいるんですが、この曲はその中でも特に印象的です。

 

自身のアーティストとしての成長はもちろん、メジャーで外部のアーティストとも共同で制作をしていくことで今までになかったような要素も取り入れられるようになってきたというところもあるんでしょう。

米津さんいわく「Phoenixのようなフランスのインディーポップのバンドのイメージ」とのこと。

確かにそんな雰囲気になっていますが、よりアッパーでエレクトロポップ感の強いサウンドになっていますね。

個人的にはこういう路線はかなり好みなのでもっとこういうサウンドの曲を作ってほしいところです。

MVもエレクトロポップ感が満載で、ネオンや原色っぽい色合いがとても印象的です。

エレクトロポップといえば、「ネオン・青・ピンク」がなぜか定番になっていて、海外のエレクトロポップ系アーティストのMVでも多用されています。

 

「春雷」のMVは米津玄師公式ツイッターフォロワー数100万人、公式YouTubeチャンネル登録者数100万人突破を記念して制作されました。

YouTube上には2017年12月4日にアップされ、2019年3月現在5800万回再生を突破しています。

米津さんの楽曲の中では異色のサウンドですが、異色だからこそ刺さる人には刺さりますし、「この曲が一番好きだ」という人もいるくらいです。

 

私も米津さんの楽曲の中では好きな曲の上位にあがるほど好きな曲だったりします。

エレクトロポップ好きな人には特にオススメの一曲ですし、この曲が好きだと感じた人には是非エレクトロポップというジャンルをオススメしたいです。

春雷 全体のテーマ

“春雷”というのは言葉そのまま「春の雷」ですが、寒冷前線により起こる春先の雷のことです。

春の季語にもなっていて、春の訪れを告げるようなものといわれています。

米津玄師の「春雷」は一言でいうと「ラブソング」です。

 

その恋の訪れはまるで”春雷”のようであり、また恋に落ちるさまを「雷に打たれた」ようなものとして表現しているんでしょう。

米津さんの楽曲のタイトルや歌詞では一つの言葉で二つ以上の意味や事柄を表現することがよくありますね。

突然の恋の訪れ、そして一喜一憂して揺れ動く感情を切なくも美しく表現した歌詞になっています。

春雷の歌詞の意味を考察

 

1コーラス目 Aメロ1

現れたそれは春の真っ最中 えも言えぬまま輝いていた

どんな言葉もどんな手振りも足りやしないみたいだ

その日から僕の胸には嵐が 住み着いたまま離れないんだ

人の声を借りた 蒼い眼の落雷だ

ここで恋に落ちた様子が綴られています。

「春雷」というだけあって春の真っ最中に恋に落ちてしまいます。

“輝いていた”という言葉は相手のことと、その恋心自体にかかっているように思います。

そのあまりにも大きすぎる恋心を”どんな言葉でもどんな手ぶりでも足りない”という言葉で表現しています。

「こんなに好きなんだ」という気持ちって言葉で簡単に説明できなかったりしますが、その感覚が絶妙に表現されています。

また、春雷にかけて恋心を”嵐”と表現していますが、これもその感情がいかに強いものなのかがわかります。

“人の眼を借りた蒼い眼”ですが、”蒼い眼”とは相手が外国人ということを表しているのかもしれません。

実際のところはわかりませんが、相手が青い瞳の外国人となるとまた色々と想像がふくらんできますね。

また、その人やその人に抱く恋心を”落雷”に例えていることから”人の声を借りた”という言葉もかかっているようです。

 

1コーラス目 Aメロ2

揺れながら踊るその髪の黒が 他のどれより嫋(たお)やかでした

すっと消えそうな 真っ白い肌によく似合ってました

あなたにはこの世界の彩りが どう見えるのか知りたくて今

頬に手を伸ばした 壊れそうでただ怖かった

“揺れながら踊る髪”、”真っ白い肌”という言葉で想いを寄せる相手は女性であることがわかります。

“嫋(たお)やか”という普段あまり使わないような言葉が使われていますが、「しなやかで優雅な姿や動作」という意味でこれも女性をイメージさせますね。

ちなみにここで髪が黒となっているので、外国人ではないのかもしれません。

ここでは敬語で自分の目に映る相手の姿を伝えていますが、そこにも相手を思い敬うような気持ちが現れています。

“世界の彩りがどう見えるのか知りたい”と相手の目線で世界を見てみたいというところにも想いの強さを感じます。

“触れたら壊れそう”とは花のように可憐な女性なんでしょう。

この2回のAメロでその恋の訪れと、相手がどんな人物なのか(自分にどう映っているのか)が綴られています。

 

1コーラス目 Bメロ

全てはあなたの思い通り 悲しく散らばった思いも全て

あなたがくれたプレゼント

ゆらゆら吹かれて深い惑い 痛み 憂い 恋しい

あなたへの想いが綴られます。

“あなたの思い通り”になってしまうほどの入れ込みようです。

“悲しく散らばった思い”、”惑い 痛み 憂い”というのはあなたに想いを寄せるがゆえに生まれる切ない感情だったりのことだと思いますが、それすら”プレゼント”と受け止めています。

そして、最後に”恋しい”という一番強いであろう素直な言葉が、まるで口からこぼれるように添えられています。

 

1コーラス目 サビ

言葉にするのも 形にするのも そのどれもが覚束(おぼつか)なくって

ただ眼を見つめた するとあなたはふっと優しく笑ったんだ

嗄(しゃが)れた心も さざめく秘密も 気が付けば粉々になって

刹那の間に 痛みに似た恋が体を走ったんだ

前半の2行は相手に心酔してしまっているような状況がよく見て取れます。

ここで印象的だったのが後半の2行で、その言葉はまるで小説の一説かのような文学的で美しい表現がされています。

“しゃがれた心”と”さざめく秘密”、表現が文学的すぎてそれが一体どういうものなのか理解しづらいかもしれません。

“しゃがれる”というのは「声がかすれる」というような意味になるので、”かすれた心”とも言えますが、要するに「心が傷ついている」というような表現でしょう。

“さざめく”は「騒ぎ立てる」という意味ですが、「騒ぎ立てる秘密」というのはどういうことでしょうか。

これは解釈がかなり難しいんですが、自分の「隠しておきたい秘密」ということかもしれません。

そんな心も秘密もあなたの前ではどうでもよくなってしまって、それを”粉々になる”と表現しています。

“刹那”は「一瞬」ほどの短い時間のことです。

“痛みに似た恋”というのもとても素敵な表現で、特に始まったばかりの恋は幸せな気持ちだけでなく、切ない想いをすることもたくさんあります。

それがうまく表現された言葉だと思います。

 

2コーラス目 Aメロ1

深い惑い痛み憂い繰り返し いつの間にか春になった

甘い香り残し陰り恋焦がし 深く深く迷い込んだ

ここは1コーラス目のAメロと同じコード進行ですが、メロディが変わっていて曲に変化が出ています。

“深い惑い痛み憂い”と1コーラス目のBメロと同じ言葉が出てきています。

それを繰り返し”いつの間にか春になった”というのは、「あなたを思い続けていた」時間の長さを表しています。

春から始まった恋なのにまた春を迎えているので、もう1年以上経っているいるのかもしれません。

いずれにしても決して短い時間ではなくあなたを想い続けているのがわかります。

しかし、なおも”陰り恋焦がし 深く深く迷い込んだ”とあるので、あなたと僕の状況はあまり変わらず恋も実っておらず、ひたすらに想い続けているようです。

 

2コーラス目 Aメロ2

花びらが散ればあなたとおさらば それなら僕と踊りませんか

宙を舞う花がどうもあなたみたいで参りました

やがてまた巡りくる春の最中 そこは豊かなひだまりでした

身をやつしてやまない あんな嵐はどこへやら

ここで”あなたとおさらば”という言葉が出てきます。

“花びらが散れば”というのは春の終わりを想像させますが、あなたと会える時間は限られたものだったのかもしれません。

または何か制限された状況にあるような言葉で「儚さ」を表現しているんでしょう。

ここでも文学的な言葉で”あなた”に手紙を送るような言葉が綴られています。

“身をやつして”というあまり聞き慣れない言葉が使われていますが、”身を窶(やつ)す”というのは「痩せてしまうほどに熱中する」という意味です。

ひたすらに”あなた”に心酔しきっている様子が綴られ続けます。

 

2コーラス目 Bメロ

まだまだ心は帰れない その細い声でどうか騙しておくれ

カラカラに枯れ果てるまで

ふらふら揺れて甘い香り 残し 陰り 幻

“心は帰れない”という表現は「あなたを想う気持ちが冷めない」ということでしょうか。

“枯れ果てるまで騙しておくれ”は、もうやけくそというか「一生ついていきます!」的なニュアンスに感じます。

最後の”幻”という言葉も印象的で、決してその恋心やあなたは幻ではないんでしょうが、幻にも見えてしまうほどに美しく、ある意味幻想的なものにも見えてしまうのかもしれません。

 

2コーラス目 サビ

聞きたい言葉も 言いたい想いも 笑うくらい山ほどあって

それでもあなたを前にすると 何にも出てはこないなんて

焦げ付く痛みも 刺し込む痺れも 口をつぐんだ恋とわかって

あなたの心に橋をかける大事な雷雨だと知ったんだ

“焦げ付く痛み”、”刺し込む痺れ”と、1コーラス目のサビと同じく不思議な表現の言葉が出てきます。

この言葉にいたってはもはや解釈ができませんが、字面としてなんとなく雰囲気は感じ取ることはできます。

前半の2行は同じくわかりやすい文章なんですが、後半の2行はあえてこのよう難解な表現をしているようです。

この曲の歌詞は基本的に大きなストーリー展開がなく、終始同じような内容が綴られているので、ストーリー以外の部分で面白味が見いだせるようにしているのかもしれません。

 

Cメロ

どうか騙しておくれ 「愛」と笑っておくれ

いつか消える日まで そのままでいて

Cメロのパートでは、この同じ歌詞が繰り返し4回歌われています。

米津さんならその4回とも別の歌詞をつけそうな気がしますが、もちろんこれは手抜きなんかではなくて、”僕”の堂々巡りしているような心情を表現しているんでしょう。

また”騙しておくれ”という言葉が出てきますが、確かにどうしようもない恋をしたときって「騙されてたとしてもいい!」なんて気持ちも生まれるものですね。

“「愛」と笑っておくれ”というのは、もはやばかげているような僕の恋心を「いっそのこと笑ってほしい」ということでしょうか。

“いつか消える日まで そのままでいて”というのは逆にいうと「あなたがそのままでいる限りは消えることはない」ことです。

この後の歌詞が1コーラス目の繰り返しになるので、実質このパートが歌詞の最後とも言えて、今後消えそうもないその強い気持ちを綴ったところで歌詞を締めています。

 

3コーラス目 サビ

言葉にするのも 形にするのも そのどれもが覚束なくって

ただ眼を見つめた するとあなたはふっと優しく笑ったんだ

嗄れた心も さざめく秘密も 気がつけば粉々になって

刹那の間に 痛みに似た恋が体を走ったんだ

ここは1コーラス目のサビと同じ歌詞です。

サビの歌詞というのは曲の中で一番印象的なものですが、1コーラス目の歌詞を最後に持ってくることで、その想いが巡り続けていることを想像させます。

また、最後まで状況は変わっていないということなので、その報われない恋心が切なく余韻を残します。

まとめ

結局僕の恋は成就していないようなのでなんとも切ない印象を受けますが、その恋心はとても純粋で、それをとても美しく文学的な言葉で表現しています。

決して思い詰めている様子ではなく、相手を責めるような言葉もないので切ないながらもどこか爽やかで、”僕”に対して好印象を持ちます。

また、”和”を感じさせる言葉も多く使われていますが、”和”とエレクトロポップという組み合わせもなんとも絶妙です。

聴けば聴くほど味わいが深くなっていく、そんな曲かもしれません。